2016年5月17日火曜日

日本ってすごいとこ!!??

小松のことを書こうと思って久しぶりに司馬遼太郎氏の街道をゆく42「三浦半島記」を手にした。坂東武者の台頭から始まる歴史が中心だが、最後の方に「昭和の海軍」という節がある。その書き出しはとても重い。しかし今も心すべきものとして響いてくる。最初の数行を引用させてもらう。

「国が亡ぶとき、だれもかもが寄ってたかってほろぼすものらしい。
昭和の陸軍がそうだった。明治の陸軍に濃厚に存在した現実を計算する能力は、なかった。
兵にも国民にも精神主義を強い、「世界一の陸軍」であるかのように、自ら錯覚した。」
と記している。司馬氏の別の本で読んだが、戦車の装甲も米国、ソ連の物に比べすごく薄く、張子の虎のようなものだったという。歩兵の持つ鉄砲も貧弱なもので、連発式の米国のものなどに及びもつかぬものだった。どんな精神力をもってしても、持ち物が持ち物ではどうしようもないはずなのに。
海軍はと言えば、軍艦の数量も少なく、装甲の貧弱さを自覚していただけでなく、軍艦は油で動くがその油は日本に産しないことから見て海外に挑みかかり、戦争を続けることの無理を知っていた。冷静な判断を下していた。
山本五十六の「開戦すれば、1,2年はあばれてみせます」といったのは、続ければ、あとは敗けるということである。武人である故、そうは言えなかったのだろうが、政治家がそれを察知できなかった。再び司馬氏の言を引きたい。
「国家に危険な行動を避けさせるのは、冷静で、普遍的な計算と比較の能力である。政治家や言論人こそその能力をもつべきだったが、そういう人はいなかった。」

翻って今の時代、そういう人はいるだろうか?もうちょっと身近なことに目を移しても、何か冷静さを欠いた気になることをよく見かける。ヘイトスピーチだけではない。もっと日常的なことでの報道などにも心配の影がある。民衆の感情論におもねるような報道に接することが多いこの頃である。そのうえ、「日本いいですね」といいとこだけ浮き彫りにしたテレビ番組も目立つ。もっと冷静に日本を突き放して見る目も大切なのではあるまいか。一方的な見方の強調が習慣化すると、誤った方向に導く背景となりかねないことを、我々は心すべきではないだろうか。

2 件のコメント :

QQ さんのコメント...

極論かも、ですが、

日本の良いところを発見できるのは
海外に住んだり、よくよく海外に興味を
持って、 みたり調べたりしている人達では
ないかなぁ~ と思うことがよくあります。

マスコミも日本の良いところ、凄いものを
紹介するなら、 それと同じ位に海外の
素晴らしいものも取り上げるべきだと
思うのですが。

権兵衛 さんのコメント...

まさにいいところまずいところを他国と比べるべきですね。
今の日本は外から人がどんどん来るけど、国民の
気持ちはずいぶん内向きになってるなーと思うのです。

凄いところもいいけど、いつも心するべき欠点も
取り上げてほしいですね。ジャーナリズムの役割として。

本文で取り上げたような
>、「世界一の陸軍」であるかのように、自ら錯覚した。
かのような、或いはナチスドイツのような優性民族(?)
のような意識、排他的な意識が芽生えてこないように
するために。