久しぶりに郷土史。表題は永井路子さんが書かれた著書(有隣新書)で、だいぶ前に読んだのだが大変面白かった記憶がある。
通常は源頼朝の反平氏旗揚げをもって日本の中世の始まりとするのだが、永井さんは頼朝のと云うより、頼朝を担いだ関東武士団のクーデターと捉え、その時中心となって活躍したのは三浦一族とする。巻頭の章に三浦氏を選んだ所以はここにあるようだ。この一族、豪雨のための川の氾濫が災いして、頼朝の旗揚げに間に合わなかった。彼らが間に合ったならば、頼朝の軍勢は2倍に膨れ上がっていたであろう。
頼朝は大庭勢に敗れ、一旦、安房に渡海する。三浦一族は畠山重忠率いる軍勢に三浦半島のに端に追い詰められる。三浦一族の当主は三浦大介義明90歳。郎党を集め、ここは名より命を惜しめ、そして必ず頼朝を探しだし、一緒に武家の世を拓けとさとし、郎党はやはり安房へ落ちる。義明は足手まといとならぬため、立て篭もった衣笠城に残り、命を捨てるのである。「剛毅と冷静な判断力」を持つ三浦義明の描写がとても好きだ。永井さんは「鎌倉時代の幕開けを飾るにふさわしい人物」と云い切っている。その”冷静さ”が嫡男(実は次男、長男が若くして死んだため)義澄、その子義村に受け継がれ、”剛毅さ”が、若くして死んだ長男義宗の子、和田義盛に受け継がれたと書いておられる。
頼朝一派と三浦一族は安房で合流し、坂東の武士団を纏めながら、鎌倉へ入る。
私はこのブログに、平安時代末から鎌倉期初めに、八王子から北相にかけて活躍し和田氏とともに滅んだ横山党に関連して何度か書いたが、その同盟者の和田氏についても少し調べ、書いてみたいと思う。その始まりとしてこの本を紹介するのがいいのではないかと触れてみた次第。
この本は2章に和田氏、3章に土肥、土屋、岡崎氏、4章に曽我兄弟、5章に大庭氏、6章に波多野氏、7章に梶原氏など、8章に渋谷氏など、を取り挙げている。
東鑑に関する深い知識の上にたって、現地を探訪してかかれた歴史評論とも云うべき書物。史跡の見方など、示唆に富んだ、お勧めの一冊である。
5 件のコメント :
この時代に、ビデオやデジカメがあったらもっと詳しく事実がわかったのにと思うと残念です。写真の歴史が約130年ですから昔の写真から色々想像すると面白い物です。
歴史は、裏付けや関連を探していくとトンデモ無い所に導かれる事があります。楽しいですよねぇ~(笑)。
歴史もなかなか面白いところがありますね~、勉強になります。
中さん
歴史を読むって、どこか推理小説を読むようなところがありますね。ただデータが少なすぎるので、Aさんの見方、Bさんの見方、Cさんの見方・・・・があって仕方ないことだと思います。
そういうのを比べてみるのも面白いな~と感じるこの頃です。
菊池さん
そのうち歴史に関する知識は蒸発していくだろうな~と思うと、今のうちに興味を持ったことはやっておきたいと思います。
私も郷土の歴史に興味を持ったのはこの本のおかげです。永井さんには以前鎌倉の文学館でお会いしたようなしなかったような・・・。
その後博多出身のアングラ劇場創設の横山さんという方と接触が始まり、和田と横山の話が盛り上がり、二人の出会いは何かの因縁とずいぶん入れ込まれたことがありました。その後音沙汰がないので当時90歳に近いお方、もう当然に他界されているはずですが…。
達夫さん
確かに因縁とも思える遭遇ですね。
私は横山敏男と云う人が書いた「横山党とその一族」と云う分厚い本(A5で約600頁)を入手したのですが、よーく調べたな~という感嘆の思いでした。
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