少し遡るが9月23日にNHKTVによる「追悼 経済評論家 内橋克人 未来への遺言」という25分番組がありました。氏の若いころからの活動の軌跡が25分に纏めてありましたが、幾つか心に残る言葉がありました。
●「人間復興の経済学」、現在社会に吹き荒れている市場原理主義=新自由主義からの脱却です。社会がそう云うことが無理なく出来る状況で無いのに、自己責任という言葉が先走っていることに私自身腹立たしい思いがしていました。
●「人間の命のために経済があるのであって、経済のために人間の命があるのではない」と表現されていたと思いますが、上の話と関連して印象に残る言葉でした。
●「習熟し、深く知ることから、新たな発想、創造する力がでる」ネットを通して、一日毎に契約して、それ毎に仕事をこなす、一日契約社員の在り方への警鐘です。これは効率的かもしれませんが、習熟は失われます。そう云う社会状況は社会の実力を下げるだけといえるでしょう。このような形態が若い層に浸透していくことは大変危険で、未来社会の姿を思い浮かべるのが怖いぐらいです。
NHKが最後に選んだ言葉は
●「頂点同調主義への警鐘」社会の先頭に立ってる人(頂点)の言うことへ疑問を述べる勇気が中々出ない、頂点へ同調してしまう心です。これは戦前に在って、この心の傾向が戦争へ突き進むことを許してしまったわけですが、果たして戦後今まで、変わっているでしょうか。戦後もずーっと頂点同調の傾向は相も変わらず我々の中に在ると思います。異議を述べることを恐れる心、異質であることを恐れる心、これを脱却しないと、もと来た道を歩むのではないでしょうか。
権力の側には立たず、何時も背筋の通った話をしておられた、内橋さんならではの重い遺言ですね。心して常に社会の在りように流されず、おかしいと思うことはおかしいと言う勇気を持たないといけないとつくづく思いました。そうしないといつまでたっても、日本人は学ばないと云うことになってしまうと思うのです。「戦争は嫌だ」と言うつぶやきはよく聞きますが、言うだけでは力にならないと思います。頂点に同調しない強さが問われているのだと思います。
さて、折も折、岸田新首相は「新自由主義からの脱却」を標榜しました。時機を得た発言とも言えます。ちゃんとやってくれるかどうか、池田勇人さんのようにちゃんとやるかどうか、我々はしっかり見張りましょう。
古い人の名前が出たのでついでに、池田勇人さんの少し後に首相になった佐藤栄作さんは退任するとき、記者会見をして、自分の実績、経済的繁栄を誇りつつ、それでも社会にある不満に苛立ち
「繁栄の中の貧困感」と社会の状況を評しました。私は違うと瞬間に思いました。人々の心はちっとも豊かになってない。佐藤さん間違ってるよ、「貧困の中の繁栄感」だよと思いました。
岸田さん、「人間復興の経済学」を実践してくれますか?
2 件のコメント :
内橋克人 未来への遺言
一つ一つの言葉が貴重に思えました。
市井の人々が世の中の在り方について自分の考えを明確にし、臆せず発言する社会に是非なりたいですね。
つくづく思うことは、教育がとても大事だと云うことです。制度より人を得る事。そのために豊かな感性を持った人々が教育の場に沢山集まることではないでしょうか。
教育は未来社会への投資。それは人的にも経済的にも。投資を怠れば未来は暗くなる。
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