今年のWBCの決勝は最終回の最終打席にトラウトが立ち、投手大谷と対決するという全く夢のような場面だった。
大谷がトラウトに速い直球で空振りさせた後、スライダーで空振り三振を取り、劇的な勝負にけりがつき
日本が優勝した。
若いプレイヤーが躍動していた。若い投手陣がアメリカの強力打線をねじ伏せた。
不調をかこっていた村上が最後に本来の力を取り戻した。いやあえて言えば打撃技術は取り戻した。
しかし彼はこの間にさらに今までより大きなものを心の中につかんだに違いないと思う。
このWBCで栗山監督が第一の目標としたことは、優勝ではなく、若い人の目を世界に向けさせ、世界に向かって
羽ばたけるよう、大きく育てることではなかったろうかと感じている。うまくいけば優勝はついてくると。
そのように考えて腹をくくってプレイヤーの陣容を作った。
ダルビッシュを中心に投手サークルが出来、大谷、吉田(鈴木がいれば彼も)が打撃陣を引っ張る。選ばれなかった
人たちの中にヌートバーより技術的に優れた人がいたかもしれないが、彼の参加はムードメーカーというだけ
でなく、若い選手の目を世界に向けるという隠れた役割を監督が目論んだに違いない。果たして、ヌートバーは
若い選手の中に溶け込み、言葉とか文化の違いで引っ込み思案になりがちの若手の心をほぐした。
栗山氏の狙いは見事に結実し、若い人たちが躍動した。日本の野球に対する世界の目もかわったであろうが、
それよりも何よりも、若いプレイヤーの意識の中で世界との距離感は縮まったに違いない。
開拓者野茂以来徐々に日本を飛び出して活躍するプレイヤーが増えているが、
サッカー同様、より多くのプレイヤーが世界にはばたく日はそう遠くあるまい。
栗山監督の人物の大きさに敬服する次第である。